「牛が山を駆ける牧場」奮闘記

新米 牛飼いの日常をお届け

終わる命・続く命

子どもの風邪をもらって午前中ダウンしていました。

とはいえ、山の牛たちの世話をしなければいけない。

ダルい体を起こして山へ向かいます。

 

いつもより遅い時間にエサやりにいったので、待ちかねて立っている牛たち。

今日は「さくら」ちゃんが先頭でお出迎えか...珍しいな。いつも最後尾にいるのに。

 

「さくら」ちゃんは2歳になる頃に我が家に来てくれた牛です。

同じ町内で他の農家さんに飼われていました。

その方が畜産をやめてしまうということで市場に出していたのを購入した牛です。

うちにいる牛の中で、昨日屠場に連れて行った「ふじ」に一番雰囲気が似ています。

ずんぐりむっくりな体、おぼこい雰囲気、人懐っこさなどよく似ています。

「さくら」ちゃんのお腹には3頭目の赤ちゃんが入っています。

「さくら」ちゃんは「ふじ」とは違って妊娠しやすい体質ですが、ちょっと興奮するとスイッチが入ったように暴れだします。近づくときに注意です。

一方、「ふじ」はいつも穏やかで暴れるようなことは決してありませんでした。

 

牛にはそれぞれに個性があって、みんな違います。完璧な牛なんていません。

一頭一頭との出会い・付き合いがとても貴重なのです。

 

今日の夕方、屠場の責任者の方からご連絡をいただきました。

「無事に終わったよ」と...

「ふじ」はこの世にもういません。

 

牧場には続いていく命と、終わる命があります。

終わる命に感謝してお客様に「美味しい」をお届けするのがこれからの仕事です。

命をくれた「ふじ」に失礼がないように一生懸命やっていこうと思います。